人気ブログランキング | 話題のタグを見る
純銀のスプーン  une cuillere en argent massif
純銀のスプーン  une cuillere en argent massif_f0074803_5223122.jpg

フォーク、ナイフ、それにスプーンの歴史を調べていくと拍子抜けするほど歴史が浅い。
狩猟民族の必要性からナイフがまず初めに生まれるとしても、フォークとスプーンの登場は
それから何世紀も待たなくてはならない。

金属製のスプーンは14世紀中頃のフランスで初めて作られる。15世紀末にイタリアで
生まれたフォークはメディチ家を通じて16世紀初頭にフランスに登場する。
右手にナイフ、左手にフォークという一応の約束事ができたのはヴィクトリア朝イギリス
(1870年代)だというから驚くでしょう。

普通の家庭で金属製のカトラリーが登場するのはもっと後になってからのことだろうと
想像できる。ハイジだって『フランダースの犬』のネロだって木のスプーンしか使ってない
じゃないか。まあ、それは別の話かもしれないけれど貧しい家庭で陶磁器の皿、金属の
カトラリーが普通に使われるようになったのはそんなに昔の話じゃない。

そうやってヨーロッパの野蛮な方々が手づかみで肉をしゃぶっているあいだ、我々は
8世紀頃から箸を使い、その礼儀作法までを江戸時代までに体系化しているのだから
これは日本を含め、東アジアが世界に誇れる文化だ。

ヨーロッパ人だってシルクロードを通して箸文化には当時から触れていたはずなのに
どうして箸を使わなかったのだろう。不思議だ。その頃から使っておけば、今だって
上手にお鮨が食べられるのに。
(ちなみに、箸が上手に使える外国人を僕はしっかりと褒めてあげるのに、フォークと
ナイフをエレガントに使いこなす僕のことは誰も褒めてくれない)


前置きが非常に長くなりました。
今日の13区の蚤の市でただひとつ見つけたもの。このスプーン1本。
スプーン誕生から約400年経った19世紀(フォーク・ナイフの左右が決まった頃だ)、
ミネルヴァ(Minerve:女神、ギリシャ神話のアテナにあたる)の刻印のある純銀。
前にも紹介したと思うのだけれど、ウニプラunis platというこの伝統的なスタイルが
僕は一番気に入っている。

純銀のスプーンならではの薄さ、軽さ、それと唇と舌に触れる柔らかさ。
他のものではちょっと出せない味だと、思う。



【追記】
Tボーンステーキ、スペアリブ、子羊のロースト、この辺りはフォークもナイフも放り投げて
手で食べるに限る。手で鷲掴みしていた原始的な時代(失礼、つい数世紀前)の記憶が
まだ残っているからなのかもしれない。
by pointcinq | 2007-05-13 05:26 | 品物の紹介 | Comments(2)
Commented by piromin at 2007-05-13 09:50 x
ものすごいアクセス数!って当然です。
興味を覚えさせて、その上に分かりやすい文章ですもの。
本当に賢い方は難解な文章を書かないそうです。
↑も↓も興味津津です。
ところで、↑の銀スプーンの右横のものは何ですか?
Commented by pointcinq at 2007-05-13 15:40
どうもありがとうございます。褒められてまた図に乗ります。
上のものはルーペです。下の下のコラムに登場する10倍のツァイス。
友達が誕生日のお祝いにくれた宝物です。(皮ケース付き)


<< W.Shakespeare シ...      ワインボトルの受け皿 >>