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朽ち果てた本 ~記憶について
3歩進むと片っ端からいろいろなことを忘れるおめでたい性質のわたくし、それでも、妙な
くだらない事と身の回りの数字に関してはまずまず覚えているほうではないかと思っていた。

10歳まで住んでいた田舎の住所と電話番号、その後の引越し先の電話番号2個、実家、
親戚、主な友人宅、バイトしたお店、その他いろいろな電話番号、パスポート番号、クレジット
カード番号、銀行口座3種類とその暗証番号、JALの会員番号、そのあたりまで完璧だった。※

それがつい一週間前に暗雲が立ち込める。こちらの銀行の暗証番号4桁が出てこない。
これは自分で設定したものではなく銀行から与えられたものだから、という言い訳はできるの
だけれどこの7年間使い続けてそんなことは一度もなかった。ぽっかりと空いた頭の空白に
しきりと首をひねってみても出てくるは無意味な数字の羅列ばかり。

そうなるとだ、日本でも本当に苦手な事務手続きを、よりによってフランスでフランス語で行う
という微かな耳鳴りがして気が遠のいていくような先の長い手続きが待っているわけだ。

たった4つの数字を忘れたがために、どうしてそこまでせにゃならんのかと悪態をつきながらも
なんとか対処しているときにふと浮かんだ4桁。なんのことはない、それが正解。

記憶というのは仕舞う場所も要らないし、誰にも盗まれない、他には代えられないものである。
毎日膨大な量の記憶が失われていく中で(それが記憶というもののいいところでもあるのだ
けれど)、失くしたいものと失くしたくないものを統制できないのがまた歯痒い。

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誰のものだったかも忘れた言葉

人は二度死ぬという。
一度目はは肉体の死。
二度目は人に忘れ去られるという死。
忘却という名の死。




人の記憶がこのような本になって何世紀もあとに残るものだとすれば、それはそれで便利
だけれど、また恐ろしいことでもあるな。

16世紀の朽ち果てた本を眺めていて、なんとなく考えたこと。









車のナンバーというものに関しては、まるで覚える気がないからなのか一度も覚えたためしが
無い。今日が何日の何曜日なのかも、ほとんどわからない駄目なわたくし。
by pointcinq | 2008-09-11 05:36 | 品物の紹介 | Comments(2)
Commented by りこ at 2008-09-12 00:12 x
世の中で一番哀れな女は?、「忘れられた女です」と書いたは、マリー・ローランサン(「鎮静剤」)、ちらっと思い出しました。
5冊の古本たちはシリーズものなのでしょうか。すっかりオブジェと化していますねぇ。ゆっくり自然にかえっているよう。誠さんは救世主ですね。

ところで、友達が虫眼鏡(大きめ シンプル)を探しているのですが、宮脇商店にありますでしょうか?出来ればフランスもの希望のよう。
Commented by pointcinq at 2008-09-12 05:36
こんにちは。虫眼鏡は好きなアイテムなのですが、今は持ち合わせておりませぬ。
また、見つけましたらご連絡差し上げます。

「忘れたれた女」、悲しいもんです。
夏木マリの唄にもローランサンのその言葉からの唄がありました。
結構好きです。

本は、まったくのばらばら。よくもまあここまで。


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